事例6終末期の患者様の温泉旅行をサポート

30年来の友人と最後の旅行に出かけたい

たとえ病気を抱えていても、できることであれば旅行を楽しみたい――そんな願いを抱く人は多いのではないでしょうか。し かし、終末期にさしかかった患者様が旅行に出かけるのは、容易なことではありません。旅先での医療処置や容態が急変したときの対応などに不安があるため、 出かけたくてもあきらめてしまう患者様やご家族も多いのが実情です。
本ケースでは、余命告知を受けた患者様が、アラジンケアの看護師が旅行中ずっと付添うことで、楽しい温泉旅行を実現した事例をご紹介します。

Fさんは肺がんを患い、余命3ヶ月を告知されました。残された日々を悔いなく過ごしたい――そう考えたFさんの頭に浮か んだのが、近所に住む30年来の友人Mさんのことでした。Mさんとは子育ての苦労も分かち合い、大変な時期を支え合った仲。人生の様々な局面を、友人とし て共有してきた大切な存在でした。

そんなMさんに、友人からの感謝の気持ちとして何か記念になるような贈り物がしたい――Fさんはいろいろ考えた末、友人 が大好きな温泉旅行をプレゼントしたいと考えました。しかし、自分自身は入院中で、もはや自由に動ける身体ではありません。近々、退院して自宅療養に切り 替える予定でしたが、重篤な病を抱えた自分がそもそも旅行になど行けるのか、と、Fさんは不安でいっぱいでした。

看護師の付き添いで、容態の変化にも対応

一度はあきらめかけたFさんでしたが、「最後にMさんとよい思い出を作りたい」という思いは募るばかり。そこで、病棟の 看護師長に相談したところ、アラジンケアを紹介されました。旅先まで看護師が付き添い、必要な医療処置や身体ケアをすべて任せられると聞き、Fさんは可能 性を感じました。しかし、そのためには、まずは家族の承諾が必要です。

「どうしてもMさんに最後の恩返しがしたいの。看護師さんが旅行に付き添ってくれるから、安心だよ」
息子さんに自分の思いを打ち明けましたが、息子さんの表情ははかばかしくありません。お母様の希望を叶えてやりたいと思う反面、末期がんのお母様が旅行に行けるとは、到底思えなかったからです。

「まずは話を聞かせてください」――息子さんからの要請に応えて、アラジンケアの看護師が病院を訪問。Fさんと息子さん、病棟看護師も交えた話し合いの場を持ちました。
「旅行に行くなら、痛みのコントロールもできている今がラストチャンス」というのが、病棟関係者と私たちとの一致した見解でした。看護師が付き添って必要 な医療処置を行えば、Fさんが旅行に行くことは十分に可能です。そう説明したところ、息子さんもご納得いただけたご様子でした。

ところが、出発日が近づくにつれて、息子さんの心に迷いが生まれたのでしょう。旅行に対して否定的な言動が目立ち始めました。
そこで、アラジンケアの看護師は、旅行にともなうリスクをもう一度洗い出し、それぞれにどう対処するかを文書にまとめて、息子さんとよく話し合いまし た。こうして、息子さんの不安と疑問に一つひとつ具体的に回答し、納得いくまで説明した結果、息子さんの顔にもようやく安堵の色が浮かびました。
「これだけ準備したのですから、万一のことがあっても仕方がありません。あとは皆さんにお任せします」。そう言って、息子さんはお母様と私たちを快く送り出してくださったのです。

残された時間を悔いなく生きるために

紆余曲折の末、一行はようやく旅立ちの日を迎えました。Fさんは、ご自身の状態が悪化して、友人のMさんが温泉を楽しめ なくなることを恐れたのでしょう。体力の消耗を防ぐため、温泉には浸からず、かけ湯や足湯を利用するにとどめました。自分自身が楽しむことよりも、「友人 への恩返し」を優先されているようでした。
FさんはMさんと湯浴みを楽しみながら、心ゆくまで思い出を語り明かしました。2泊3日の旅を通じて、生涯の友との最後の思い出を作られたのです。

今回の旅では、いくつか想定外の出来事はあったものの、大きなトラブルもなく無事に帰ってくることができました。病棟で、会う人ごとに旅の思い出を語るFさんの様子は、実に楽しそうでした。
「おかげさまで、母にもよい思い出ができたようです。ありがとうございました」。そう言って、看護師にお礼を述べられた息子さんの顔も、満足されているように見えました。

終末期の患者様も、事前にリスクを見極めて綿密な計画を立てれば、看護師の付き添いのもとで旅行を楽しむことは十分に可能です。終末期を迎 えた患者様が、残された時間を悔いなく過ごされるためにも、精一杯、患者様のご希望を叶えるお手伝いをしたい――Fさんと息子さんの笑顔を眺めながら、看 護師はそんな思いを新たにしていました。

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